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中等部校舎の裏庭にはかなりたくさんの木々や葉が生い茂っていて
ちょっとした雑木林が点在していた。
そもそもこの学園の敷地が広すぎるのだ。
幼稚舎から大学までの大半がひとつの広い敷地内にあるのだが
やたら木が多いため「森の中の学び舎」というキャッチフレーズがぴったりとマッチしているくらいだ。
その敷地内のところどころに大学の美術学部あたりが作ったのだろうか
白い石像が学園敷地内のあちこちに点在していて
中には校舎内に飾ってあるものもある。
道なき道を生い茂った草を掻き分けながら
真っ白い制服に汚れがつかないかと気にしながら前へ進んだところで
やっと一つ目の石像を発見するに至った。
「首がない石像って鳥だったの?」
ちょっとあきれながら僕は聞いた。
真っ白な石膏の鷲が両手の翼を思い切り広げて飛び立とうとしているものがそこにはあった。
石像の周りだけは除草がしっかり行われていて、
じつは後ろ手のほうに石畳の小さな小道があるのを発見し
ズボンの汚れを手で払いながら僕は一つため息をついた。
「いやいや…人間とは限らないぞ。ほら、人と思わしといて実は動物って事も…」
そういいながら入間と岩槻は真剣な表情で鳥の首の辺りを注意深く観察していた。
よなよな首を捜す鳥の像ねぇ…なんかあまり怖くない。
どうせなら人間とかの方が怪談としては面白みがあるような気がするが。
「あ!こっちにも何かあるよ!」
岩槻が少しはなれた草むらを覗き込み手招きをしている。
「どれどれ?!」
入間が嬉しそうにそちらに駆け寄るあとから
僕は退屈そうに後を追った。
「なんだ…」
入間のがっかりしたようにつぶやく声が聞こえた。
入間に追いつくと肩越しに僕もそれを確認し
さすがにおかしくなって笑い声をもらした。
「ぷ…なんだよ、それ…。」
一同、がっかりした視線の先にいたのは、真っ白な石膏でできた、蛇の像であった。
さすがに首なし蛇は笑えてくる。
「首なし蛇が夜な夜なにょろにょろと這って首探し?おかしくない?」
僕は必死で笑いをこらえながら言った。
「うーん…でも念のため…」
そういいながら入間は草むらに入ると蛇の胴体を注意深く観察し始めた。
「そもそも蛇の首ってどの部分だ?」
入間がつぶやく。
入間が懸命に蛇の首を捜している姿にとうとう我慢できなくなって思わず爆笑してしまった。
「もうよさない?ほら予鈴もそろそろ鳴ることだしさ。」
僕はわざとらしく両手を広げて見せた。
「う…ん…仕方がない。
じゃあ続きはまた明日だな」
え!また明日もやるの?!
二人の後を続きながら
ズボンについた汚れをみて
明日はジャージに着替えようかと本気で考えていた。
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