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「え!本当に探したの?!」
放課後、音楽室にて。
桜倉先輩が目を丸くして僕たちを見下ろしていた。
「はい。でも鳥とか蛇しか見つからなくて。その石像って“人”なんですよね?」
入間は桜倉先輩の顔を真剣に見つめた。
「ぷ…あ…ごめん!まさか本当に探すとは思わなかったから!」
桜倉先輩のにんまりした顔をみて僕は全てを察し愕然とした。
「ごめんごめん。冗談なんだよ!入間があまりに熱心に聞いてくるから僕で勝手に
七不思議の1つを作ったんだよ。いやー…制服土まみれになるまで本気で探してくれるなんて
本当ごめんごめん。」
あははと笑いながら桜倉先輩は頭二つ分以上ちいさい入間の頭をなでて見せた。
「えー!作り話だったんですか?!」
入間はとても残念そうな表情を作ってから頬を膨らませ桜倉先輩の顔を上目遣いに睨んで見せた。
その様子がおかしくて僕は笑いだしそうになるのを必死でこらえた。
「怒らないでってば。お詫びに帰りにジュースでもおごるからさ!」
「え!本当ですか?!」
突然表情を明るくして喜ぶ入間。
なんて単純なやつ…。
「よし!放課後のジュース目指して演奏頑張るぞー!」
そういいながら入間は自分の席にもどってバイオリンをケースから出し始めた。
僕も戻って準備しようと先輩に一瞥して背を向けたとき
先輩がぼそりとつぶやいた。
「まんざらでもないんだけどね。」
「え?」
背中で先輩の低い声が響いた。
思わずぞっとしながら先輩の方を振り返る。
するといたずらっぽい笑顔を作った桜倉先輩が僕を見下ろしたまま
早く席に着けと合図するように手を振っていた。
先輩なりのジョークだったのだろうか。
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