異なる世界2

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どれくらい歩いただろうか。
少なくとも1時間以上は歩いていると思うが。
途中道の横で座って休憩しては歩き出しの繰り返しを続けるも
一向に景色がかわることはない。
ただ、振り返ると最初に出てきた林…いや、実は小高い山だったことが判明し
それが追いかけてくるようにぜんぜん距離が縮んでいないように思え
嫌気が差し途中から振り返るのをやめてしまった。

にしても…これだけ歩いてるのになんで日が暮れないんだろう…。
5月とはいえもう夕方の6時はさすがに過ぎているはずだ。
太陽は見えるが位置も変わっていないように見えた。

「はぁー!疲れた!!」
誰もいないのを知ってか知らずか自分でも少しびっくりするぐらい
大きな声を出すと道の脇にどっかりと乱暴に座った。

困ったなぁ…。
本当、ここはどこなんだよ…。

それにおなかも空いてきた。
本当なら今頃はレッスンが終わってコンビニで何か買って
つまんいでる頃なのかも知れない。


本当に一体どうしてしまったんだろう。

しかし誰もその問いに答えてくれるものはいない。

歩けど歩けどどこをどう向かっているのかもわからない。

だんだんといらいらしている自分に気がついた。

ここはどこなんだ!
何県何市何区何町何番地なんだ!!!

心の中で叫ばずにはいられなかった。

再びゆっくりと立ち上がり進もうとした方向を目を細めながら眺めた。

本当にこっちでいいのか?と。

確かにあの森の中に戻るつもりはない。

けれど、
本当にこっちでいいのだろうか?

この先には一体なにがあるのだろう。

漠然としすぎたこの広大な草原の先には何がある?

しばらくそこに佇んでいると…
何か地響きのような音が遠くのほうで聞こえた。

振り返ってみると森の麓のほうに大きな土ぼこりが立っているのが見える。

何かが来る!

目を凝らしてみて僕はまた言葉を失った。

こちらへ向かってくるのは、
馬の大群…。
2,30頭ばかりだろうか。
何か叫んでいるようにも聞こえる。
何かがおかしい。
そう。
何かがおかしい。
一瞬その光景を正常に認識できず
軽くめまいを覚えた。

下半身は馬なのだが
よくみると
上半身が人間で手にはなにか剣か棒のようなものをもって振り回しながら
こちらへと駆けてくるではないか!

大群の一頭が僕を見つけると
何かを大声で叫び一層速度を上げてやってくるように見えた

う…

「うわぁっっっっっっっ!!」

そう叫びながら僕は全速力で半馬人がやって来るほうとは反対の道を走り出した。

背後から何かが飛んでくる気配が感じた、次の瞬間
僕の行く手数メートル先に石の塊が飛んできた。

あんなの頭に当たったら死んじゃうじゃないか!!

「まてー!!」
「逃がすな!捕まえろ!!」
背後から半馬人たちの怒鳴り声が聞こえる。


ひーっ!!やっぱり追っかけてくる!!
つかまったらどうなるんだ!!

周りには草原と道以外何もないし
逃げ道も戦う術も何もない。

ただ出来る事は
ひたすら走って逃げることくらいだ。

しかしとうとう半馬人たちは手を伸ばせば僕を捕まえられるんじゃないかという
近距離まで迫ってきた。

どうすることもできない!

万事休す!

こうなったら!!

半馬人の一頭が手を伸ばそうとしたところで
僕は進んでいた道の真横の草地の中に身を投げ込んだ。

あとは無我夢中で背を低くして草むらの中を掻き分けて逃げる。

数十メートルぐらい進んだところでぴたりととまるとそのまま身を丸くかがめた姿勢で静止し
必死で息を殺した。

呼吸が乱れ心臓がバクバク言っているがなるべく見つからないようにしなければならない。

地面の土をただじっと見つめたまま耳に神経を集中させた。

どのくらい時間がたっただろうか。

いくら待っても半馬人が近づいてくる音や気配がない。

虫一匹の鳴き声すら聞こえず、
ただ、たまに吹く風が葉をザワザワと静かに揺らす音だけが聞こえていた。

……。

…………。

あ……れ?

追ってこない?


呼吸が正常に整ったところで、
ゆっくりと、恐る恐る顔を上げてみせる。

そこには森を出た時とさほど変わらぬ広大な草原がただただ風に揺れながら
広がるばかりの光景だった。

え?

さっきのやつら、一体どこに消えたんだ?

まさか隠れて僕が姿を見せたところをまた襲うきじゃ?!

慌てて左右前後を見回すがなんの気配も感じなかった。

静かに立ち上がる。

一体なんだったんだ?

暫くの間そこに黙って立ち尽くしたが
何の変化も起きない。

本当に、一体なんだったんだろう…。

とりあえず、どうにか助かったらしい。

もう汚れを気にする事も諦め、かつては真っ白だったスーツについた
土を軽く手で払い荷物を持つと、今度は前方に見えた別の道まで出て、
ただひたすら、森とは逆の方向へと歩き続けた。

この先に何が待ち受けているかなんて事も当然予想できずに。

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