第七章:神様の僕
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そこには入間が立っていたのだ。
服装はギリシャ神話に出てくる登場人物が着ているような布を体に巻いているし
身長も僕が知っているより気持ち高いような気もしたが、間違いない。
顔も声も、入間そのものではないか。
すると入間は目を見開き僕のそばへと駆け寄って叫んだ。
「これは一体どういうことだ!?通達は届いていたはず。なぜこのような事態になっている?!」
「も…もうしわけありません!」
中年兵士が土下座をして謝る。
事態が飲み込めない。
「ああ…なんて酷い…。おい、この手の鎖を早くはずさぬか!」
慌てて兵士の一人が飛んでくると僕の両手首にきつくまかれた鎖をはずしてくれた。
「お怪我はございませんか?」
入間が心配そうな表情を見せる。
なんか…こんな表情の入間って気持が悪いなぁ…と
思わず笑い出しそうになるのをこらえて言った。
「大丈夫だよ…」
入間は僕を抱き起こすと鎖によってついた手首の傷をそっとさすってくれた。
そしてまた兵士のほうへ向き直る。
「お前らただでは済まされんぞ。なぜ通達を無視したかと聞いている」
中年隊長は、ははーと時代劇に出てくる侍のような声を上げながら話し出す。
「この者を捕らえ…いや、確保したときには指輪はなかったことを確かに確認したはずなのですが…」
「何を言っている。しっかりあるではないか!」
そういいながら僕の左手を持つと小指についている指輪を兵隊たちに見えるように掲げてみせた。
「いや…しかし、間違いなく確認したはずなのです」
たじたじな中年兵は一体何を恐れているのだろう。
この指輪が一体何だって言うのだろう。
てか、指輪を確認された覚えなんて一度もなかったはずだが…?
とうとう我慢できなくなり僕は口を開いた。
「あの…一体どういう事なんですか?」
「いえ…もう心配しなくともよいのですよ。
さぁ、帰りましょう」
そういいながら僕に肩を貸しながら立ち上がった。
え?
帰る?
帰るって言った?!
間違いなくそう言った!
やっとこの変な世界から出られるのだろうか?!
悪夢が終わる?!
……
いや…待てよ…
恐る恐る問う。
「帰るって…どこへ?」
すると入間はにっこり笑みを作って言った。
「もちろん、あなたの宮殿にですよ」
疲労と空腹がMAXだったからかもしれない、
「まだまだ、始まったばかりですよ。こんなものじゃない」
そういわれたような気がしたんだ。
視界が真っ白になった。
薄れ行く意識の中、
そういえば石像の前で意識を失ったときもこんな感じだったな。
もう十分この世界は堪能したつもりだ。
だから、
帰してくれないだろうか、もといた世界へ。
そう願わずにはられなかった。
目が覚めたらあの石像の前で
慌ててバイオリンのレッスン目指して駆け出す僕を
想像しながら深い意識の淵へと沈み込んでいった。
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