学園の石像5

―5-

っかしいなぁ…。
羽鳥翼から教えられた小道をずいぶんと歩くが
一向に出口らしきものが見えずもう15分ほど林の中を彷徨っている。

どこか途中で道を間違えたのか…
とにかく早くしないとバイオリンのレッスンに間に合わない。
一度引き返したほうがいいのだろうか…
そう思っていたところでやっと先のほうに雑木林の途切れ目を見つけた。

やった!
小走りして雑木林を抜ける。

……あ…れ。

愕然とため息をついた。

雑木林を抜けた先にあったのは林の出口ではなく
石像であった。

石像の周りを木が避けるように植えられていてそこが雑木林の切れ目のように見えたのだ。

それにしても大きな石像だ。

上半身は人間だが下半身は馬のようだ。半馬人とかいうやつだろうか…。
手には弓矢のようなものを持っていて今にも天を射ようとしている。

石像の土台には丸い綺麗な宝石のようなものが埋め込んであった。
紫色の綺麗な石である。
昼間見た鷲と蛇の像にはこんな綺麗な石はついていなかったが、
何故この像にだけ?
あまりにもきらきらと綺麗だったので思わずそっと石に触れてみた。

冷たい…
つるつるとしている。

なんの変哲もない。
たぶんガラス球か、もっと頑丈な素材の何かだろう。

と、そこで我に返る。

…って、そんなのどうでもいいんだ!
早くしないと!!

とにかく戻ろう。
レッスンに遅れてしまう。

くるりときびすを返し、もと来た道を戻ろうとしたとき、
急に体が軽くなったような気がした。

え?

視界が真っ白になる。

な…
なんだ?

意識が…遠…の…い……て………………

 

 

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