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「じゃあ、竹人君が部室をでたのは17時ごろで間違いないんですね?」
黒い手帳をもったスーツ姿の男に確認を求められ横瀬桜倉は再び頷いてみせた。
「…はい…全員が射川君が退室したのを見ていました。その後のことは僕にもちょっと…。
まさかその後行方不明になるなんて…。」
思わぬ展開に横瀬桜倉の言葉は小さく震えていた。
学校の会議室の一角でスーツ姿の刑事2名にそれぞれの関係者が事情聴取を受けているところである。
竹人が17時に音楽室を後にして以来誰一人彼を見かけたものはおらず
学園内あちこちにある防犯カメラにも彼の姿は映っていなかった。
帰宅しない息子を心配した親が警察に捜索願を出したのが22時。
そして一夜が開け、夕方になり部員にその事実が伝えられた。
同じクラスの入間君なんかは朝の時点で知らされていたらしい。
しかし依然として竹人は見つかっていない。
当時部活の顧問は席をはずしていておらず責任者として横瀬桜倉が事情聴取を受けることになった。
他にも特に親しかった友人の入間君などが事情聴取に応じその日の竹人の様子や人間関係などを
一通り聞かれたという。
それにしても…まさか行方不明だなんて…。
学園の雑木林を棒を持った捜索隊がつついたりしながら
少しでも手がかりになるものはないかと探し回っているし
警察犬なども出動していた。
学園中が大騒ぎである。この調子だとそのうち新聞にも出ることになるだろう。
一体どこへ行ってしまったんだろう。
横瀬桜倉は考える。
家出をするような感じの子じゃないし人間関係で問題があるようにも見えなかった。
性格も明るくよく笑う子で物事に悲観して…なんてとてもじゃないけれど考えられない。
だとすると…やはり何かの事件に巻き込まれたのだろうか…。
なんでもいい。
とにかく無事でいてほしい。
そして何事もなかったかのようにひょっこりと姿を現してくれたら…。
自分はただただ竹人の無事を祈る事しか出来なかった。
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