第七章:神様の僕5

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そのあと巨大な温泉のようなところへアキレスに案内された。

場所は僕が割り当てられた部屋の庭にあった。

最初は大きな噴水かと思っていたのだが水を触ってみると温かかった。

日は当に暮れ空には満点の星々が輝いている。

庭のあちこちには小さなランプのようなものが光っていた。

「いや~…やっぱりお風呂は気持いいなぁ~」
思い切り手足を伸ばして見せた。
お湯はイネ=ノの部屋にあった噴水の水のように、
揺れるたびにきらきらと7色に輝く宝石のようだ。

アキレスはごゆっくりと言って着替えとタオルを置くと
気を使ったのか部屋の外へ出て行った。

ひらりと花びらが舞った。
それが湯船に一枚おち、水面に弧を描いた。

綺麗だなぁ…。
ここは何を一つとっても芸術的というか、
日の光といい花といい風といい水といい、星空といい、
どれもこれもが美しい。

はぁ…。

ため息をついて顔を洗った。

なんだかんだでこの世界と現代の時間の違いも含めて
少なくとも3日以上はお風呂に入ってないことなっている。
やっぱりお風呂は癒しになるなぁ。

そしてイネ=ノの事を考えた。

夕食後急にテンションが低くなったこと…。
タブーの話をしてからだ…。

キク=カの病状が思わしくないのだろうか?
だからもしものときは…
でもそれはタブーだから出来ない…
そういうことなのだろうか?

あくまでこれは僕の勝手な憶測に過ぎないのだが。

とにかく、明日本人に会えば分かるかも知れない。

予知能力のある神様…か…。
考えてみるとそれも不思議なものである。

たとえば僕の世界のキリスト教やユダヤ教でいう創造主は
世界や動物や人類を作り上げた。

予言よりも実行型の神様だ。

それに比べて予知能力…。
そういえば神様の上にさらなる大神というのがいると言っていた。

ここが星座に基づく世界ということはギリシャ神話?に沿っている?
だとしたら大神とはゼウスのことだろうか?

あまり詳しくは無いがたぶんそうなんじゃないだろうか…。

ああ…
携帯が使えたらネットで調べられるのに…。


空を仰ぐ。

今まで見たことの無いような
たくさんの星がまるで光の花園のように瞬きながら輝いている。

「綺麗だな…」

よくわからないことだらけの世界だが
もうじき帰ることができるようだ。

短い間だけどたくさんあったなぁ…。

この世界に来てからの事を思い出す。

広大な草原、半馬人、ガラスの蝶、不思議なものをたくさん売っている市場、
病に冒された女の子、メグサやお母さん、兵士…、
そしてイネ=ノ。

元の世界に戻ったら
この指輪も消えてなくなってしまうんだろうか。

左手でひかる小指の指輪を見つめた。

いつの間にか僕の指にはまっていたこの指輪のおかげで
大冒険できたよ。

皮肉っぽく笑って見せた。

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